CIOという職にあると、いろいろなことを相談されます。
特に、テクノロジーの面では、そのすべての責任を担うわけですから、それは当然といえるでしょう。
どの会社でもそうだと思いますが、技術が進歩するにしたがって、意識する、しないにかかわらずどうしても「デジタルデバイド」は現実のものとして感じられるようになってきました。
この言葉が浸透したころには、「コピー機の使い方がわからない」とか、「インターネットプローラーでどうやって検索したらいいかわからない」という、英語で挨拶ができるかどうかのレベルでしたが、最近はそのデバイドのボーダーを超えた人たちの間でもデジタルデバイドは広がっています。
みんな、インターネットやコンピュータが便利だという実感だけはあるから、自分はデジタルデバイドの敗者サイドではないと思い込んでいますが、実際はどこにボーダーを引くかという違いだけで、自分が思っているほど勝者サイドにいるわけではありません。
もちろん、おれだってボーダーの場所によっては間違いなく敗者に区分されます。
サーバーとクライアントの違いがわからない。
VoIP(IP電話の基本技術)がわからない。
だから、競合他社でこんなサービスを始めた、という情報があるとうろたえます。
「うちでもこんなのできない?」
こんな相談は、明らかにデジタルデバイド敗者サイドの典型です。
IT革命以降、物理的にものを動かす以外にできないことは存在しません。
費用と時間をかければ実現しないものなどないと言っても過言ではありません。
だからそういう相談に対する回答にはいつも苦慮します。
正直なところ、おれは
「やらない」
または
「やりたくない」
のです。
怠慢で言っているのではなく、
「やるべきではない」
と答えたいのです。
それを相手に伝えるべきなのかどうか。そもそも、そういう質問というのは戦略とビジョンが統一されていない人から出るケースが多いのです。
ビジョンが存在すれば、そのビジョンに合わせた戦略が存在するはずです。
サービスの内容においても、ビジョンにのっとったものであれば、すでに開始していなければならないはずだし、少なくともプロジェクトは進行していて当然でしょう。
そうではないとしたら、他者のサービスをこちらでやるとしたら別の意味しかありません。
ビジョンの問題ではなく、純粋に戦略の問題です。
競合にとって、それがキラーコンテンツ、キラーアプリになっている場合に限り、こちらもそれについづいすることによってキラーコンテンツをキラーでなくすことができるのです。
連中がキラーコンテンツを失った時、100パーセントおれたちが勝てるのであれば、戦略上そのサービスを検討すべきでしょう。
おれは質問に質問で返します。
「彼らにとってそのサービスは重要ですか。そのサービスがなければ彼らは存在できませんか?」
ビジョンも戦略もない人は、たいていその話題から去っていきます。
2007/08/07
ないものねだり
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